ワイヤーのばねで携帯電話の内蔵アンテナを作りたい
日本を代表する携帯電話のアンテナメーカーであった顧客から送られて来たのは、ワイヤーばねが小さく折り畳められている1枚のポンチ絵。2001年当時といえば携帯電話のアンテナはポップアップ式であったが、アンテナを内蔵すればより小型化が可能となりデザイン性も向上するとの狙いから、長いワイヤーばねを小さく畳んで、携帯電話の筐体内部に収納して、アンテナとして機能させるという発想が生まれていた。
受信特性に優れたスパイラル形状を活かした携帯電話内蔵タイプのアンテナを、世界に先駆けて開発する。
当該商品は医療機関では恒常的に使用しているものでもあり、回収して修理することは不可能に近い。そのため一刻も早く全国の納品先を訪れ、クレーム箇所を改善して、レンズカバーが落ちない仕組みを講じなくてはいけない。そのためには顧客の担当営業マン自らが容易に修理できることが必須条件となり、当然ながら穴を開けるなどの加工を必要としないシンプルに既存物に付加することのみでの解決策を要望。もちろんコストも最小限に抑える必要があった。
「ワイヤーから板へ」すべては発想の転換から始まった
ばね状のものを筐体に納めるために、樹脂のケースを試作して内蔵してみると、振動で巻きピッチが乱れ安定した電波受信ができないという問題が判明した。そこでアドバネクスのインサート成形技術者が発案したのが、受信に有利なスパイラル形状を活かしたプレス方法。このワイヤーばねから板ばねへの発想の転換が成功へのきっかけとなった。ポンチ絵をもとに顧客がハンドメイドで銅箔を切り樹脂に貼り付けて受信状態を測定すると、まずまずの好結果を得た。そこでアドバネクスとの協働でインサート成形可能な板ばねを試作。最終的に内蔵アンテナ向けとしては世界で初めてインサート成形技術を活用、実用化に成功した。成功のファクターは、アンテナ素子用プレス部品と実装用プレス部品の2枚のそれらを1部品化してインサート成形し、自動ライン化された次工程のプレス加工工程で不要な部分をカットすることで元の2部品に戻すというアドバネクスの発想の転換が、生産安定性を生み出した。
営業担当の声
「世界初の製品」の開発に携われ、しかも大ヒット。街でその携帯を見たときは感無量でした。